刑罰よりも恐ろしい「公表」のリスク
企業の相談を受けていて思うのは、「違反した場合の公表」が恐ろしいということです。 実は罰金刑の場合、多くの場合ば略式裁判といって、交通事故の赤キップのように、誰の目にも晒されることなく終わります。 (例外もあり、その例外の一つが、先日の電通の刑事事件です) 当然、企業は刑罰を受けることも恐れているわけですが、それ以上に、「公表され、仕事が減ってしまうのではないか」ということに恐れているように思います。 最近だと、消費者庁の公表などのサンクションが問題となることがあるのも、おそらくこのような背景だろうと思います。 弁護士のアドバイスの下、公表リスクを下げるため、どのようなことをすべきかを考えるのが望ましい時代なのだろうと思います。 弁護士 杉浦智彦 #公表 #経済刑法
弁護士の仕事はなぜAIでは難しいのか
AI時代のサムライ業(上)代替の危機 新事業に挑む https://www.nikkei.com/article/DGKKZO2142278022092017TCJ000/ こんな記事がありました。 弁護士は、他の士業に比べ、AIの代替可能性が低いようです。 それはなぜなのでしょうか。 よく、「ググれば分かる」と言われることもありますが、法律の世界やリスクの分析は、全く同じ事例が見つかればよいですが、そうでない場合がほとんどでしょう。 別の事例が、今回にも当てはまるかどうかを考える上で大切なのは「原則からの距離感」です。 これを「リーガルマインド」と言ったりもします。 司法試験は、「答え」を聞いている試験ではなく、「どのように合理的に考えられるか」が問われている試験です。そして、この原則例外の距離感をつかむのは、AIではなく、人のウエットな部分なのかもしれません。 だからこそ、弁護士の能力はAIに代替されないのかもしれません。 弁護士 杉浦智彦
企業が懸賞を行うとき、景表法に気をつけよう
企業が懸賞を行う場合、景品表示法という法律の規制が及びます。 例えば、顧客を呼び込むための手段で懸賞をする場合(一般懸賞)は、上限が定められています。 具体的には、一社で懸賞を行う場合は、取引金額の20倍(上限10万円)までが上限であり、提供金品の総額も取引予定総額の2%までとなっています。 この手のルールは、知らないとうっかり違反してしまうので、弁護士のアドバイスが必要な分野となります。 違反した場合、消費者庁が警告に来たりするわけですね。 もし懸賞をしようと思われる方は、弁護士にご相談いただくことをおすすめします。 弁護士 杉浦智彦 #景品表示法
リスクをゼロにする必要はないという話
弁護士をしていると、「弁護士がつくと、リスクをゼロにしようとして、経営がやりにくくなる」という旨の話(こんな直接的ではないけれども・・・)をされることがあります。 私自身は、リスクをゼロにしなければならないわけではないと思います。 リスクは、要するに問題が起こった場合の可能性を減らすものです。 問題が発生した場合のコストをC、発生率をHとすると C×H=考えるべきリスク ということになります。 これを上回る対策はとる必要は、経済的には乏しいかもしれません(ただ、このコストの算定をきちんとしないと、見誤ります) C×H > C×(下がった発生率)+コスト対応費用 であれば、対応したほうがよいわけです。 この算定のため、顧問弁護士を使うべきなのです。 弁護士 杉浦智彦 #コンプライアンス #リスク
コンプライアンス分野は、トライアンドエラーでよいのか
中小企業の多くは、トライアンドエラーで問題を処理していきます。 効率的ですし、失敗自体は私も恐れるべきではないと思っています。 ただ、トライアンドエラーでは対応できないのが、コンプライアンスの問題です。 コンプライアンスは、日本語では「法令遵守」、つまり法律などのルールをきちんと守ることをいいます。 トライアンドエラーが許される分野もある(たとえば行政指導が先にくるなど)のですが、そうでないこともあります。 たとえば、炎上したり、死傷者が発生したような場合です。 一回でも起こってはいけないことが、企業にはあるように思います。 それが何なのか、その企業の「生命線」はどこなのか。 それを判断してくれるのが、顧問弁護士なのかもしれません。 弁護士 杉浦智彦 #コンプライアンス #顧問弁護士
チェックをしなくてもよい契約書とはどういうものか
契約書のチェックの必要性はこれまでも述べてきましたが、 ところで「どこまでレビューを依頼したらいいのか」というのが気になるでしょう。 原則としては、全部レビューしてもらったほうが安全です。 しかしながら、いくつか例外もあります。 1つは、国に認可された約款に基づく取引です。 旅行のときの約款や、電気料金の約款などは、国が既に審査済みで、レビューしたからといって修正できるものもありません。 そのため、これはレビュー不要でしょう。 ほかにも、基本部分を既にレビューをしていて、リスクが既に明確化されているものもあげられるでしょう。 たとえば、ITサービスなどで、利用規約と契約成立の「プロセス」までをレビューすれば、あとの個別の契約などは、個々の部門ごとの判断に委ねてもリスクは動かないことが多いでしょう。 その他、いろいろありますが、悩ましいのは、「リスクがなさそう」と判断することにリスクがあるということです。 やはり原則としては、全件レビューしてもらったほうが良いとはいえるでしょう。 弁護士 杉浦智彦 #契約書 #レビュー
攻めのNDAと守りのNDAを選ばなければならないという話
NDA(秘密保持契約)を合意するとき、必ず気にしなければならないのは、 1)自社が秘密情報を開示し、相手方を責任追及する立場なのか そうではなく 2)自社が秘密情報を取得し、相手方から責任追及される立場なのか を明らかにしておくべきといえます。 NDAは、開示側に有利、受領側に有利という形では作れますが、 いずれかの当事者にだけ有利なものを作ることは困難です。 自社がいずれのリスクが高そうかを考えた上、きちんとスタンスを決めて交渉に臨むことが望ましいでしょう。 弁護士 杉浦智彦 #NDA
アプリ事業の「引退」は後処理が大変?
安室ちゃんが引退されるそうです。 私が小学生のときから活躍していたので、なかなか感慨深いです。 ところで、アプリ・サービスの「引退」は少々面倒です。 たとえば、カレンダーアプリなど、かってにサービスが止まってしまうと、ユーザーからすると非難轟々ですよね。 課金するゲームで、すごい金額を課金していたのに、それが終わってしまった場合も同様です。 このような場合、利用規約できちんとその旨を記載していれば、法律上は問題が生じることは少ないのですが、やはり炎上リスクはあります。 後処理を誤らないよう、きちんと弁護士を含めた方針決定が必要になると思われます。 弁護士 杉浦智彦
労働法が適用されない働き手には「下請法」が適用される可能性がある
労働か請負か・・・ 一つの大きな分岐点となります。 労働でなければ、労働基準法や最低賃金法のような規定は適用されなくなり、コストは下がりやすくなります。 ただ、請負(業務委託契約)であればなんでも良いわけではありません。 著しく低い対価を一方的に提示した場合には、「下請法」という法律に違反する場合があります。 ・相手方との十分な協議がない ・他の取引先の対価に較べて差別的といえるか ・通常の価格とのかけ離れ具合 ・需給関係 などを見て、もし不安がある場合は、弁護士に相談したほうがよいかもしれません。 弁護士 杉浦智彦 #下請法
協議条項は入れておくに越したことはないという話
契約書の最後のほうに 「当事者は、本契約の解釈について、または本契約に定めはないが本契約の履行に関する事項についてのすべての疑義や紛争の解決について、協議を通じて最善の努力をしなければならない」 のように規定される場合があります。 通常、「協議条項」と呼ばれるものです。 これは、できる限り、争わずに話し合いで解決するというものです。 実際のところ、これがあっても、訴訟などに発展することはあるのですが、 それでも、「この条項があるから」話し合いを進めるというビジネスの常識はあるように思います。 契約書の紙面に余裕があれば、是非入れておくべき条項だといえます。 弁護士 杉浦智彦 #契約書