個人がお金を貸す時に保証人をつけると面倒な事態も発生する
新しい民法では、借り主がきちんとお金を払っているかについて、保証人が貸主に情報提供せよと言えるようになりました。 これは、貸主が個人であっても、法人であっても同様です。 そのため、たとえ貸主が個人でも、情報提供せよと言われれば、速やかに計算して出せるようにしておくシステムを構築しなければならないわけです。 この違反の効果については、明文の定めはないですが、民法の改正に携わった潮見佳男京都大学教授によると、解除もできるようです。 その人に貸すには信用が足りないから保証人をつける場合であっても、貸主にはそれなりの義務があるということです。 弁護士 杉浦智彦 #民法改正 #情報提供義務 #保証
新しい民法では、連帯債務のときに「一人に対する請求は全員に効果が生じる」と書かないと計算が面倒
新しい民法の連帯債務の規定では、「支払え」という履行請求の絶対効が外されました。 これによって、連帯債務者の間で、遅延利息の計算などがずれることになります。 それを防ぐためにも、連帯債務の契約書には、かならず請求が全員に効果が生じることを特約として入れておくのが望ましいといえます。 細かい部分ですが、連帯債務者間でずれると本当に計算が面倒ですから、おすすめします。 弁護士 杉浦智彦 #連帯債務 #絶対効 #請求
法人が保証する場合の根保証
民法改正によって、一つの債務ではなく、ある一定の債務を全部保証するという「根保証」についても変更がされました。 個人だと、相当変更がされました。一定の場合は無効となります。 では、法人が保証する場合はどうなるのでしょうか。 実は、今回の民法改正の対象にはなりませんでした。 そのため、これまでの裁判例のルールに従うことになります。 基本的には、法人であったとしても、極度額という金額の上限や、期間を定めない「包括根保証」も法律上は有効となります。 ただ、信義誠実の原則違反や錯誤などで、かなりハードなものは制限されているようです。 その明確な線引は、実は難しいところです。 「法人」と一口でいっても、個人とかわらないようなものもあり、結局実態をみて判断されている部分もありそうです。 弁護士 杉浦智彦 #根保証 #法人
「詐害行為取消権」という制度が弱体化され、早めの債権回収が大切になったという話
民法改正により、詐害行為取消権がとても弱くなりました。 現在でも、(証拠が集めにくい関係で)なかなか使いにくかったのですが、ますます使いにくくなりました。 その大きな理由が、(きちんとした手順を踏めば)詐害行為取消訴訟を提起した人が全部丸取り優先弁済を受けられるということがなくなってしまったということです。 理屈上は相殺できるのですが、いろいろなハードルが生まれましたし、そのハードルを乗り越えても、優先弁済を妨害できるようになってしまったのです。 詐害行為取消権がある世の中では、結局、「やばい会社から先に支払ってもらったら、後で取り消されて、しかも一番最初に取ったのに優先弁済も受けられないんだから、やめておきなさい」ということが言えたのです。 しかし、今後はそんなことが言えなくなってしまうわけです。 露骨に言えば、「いかに早く債務者からお金をふんだくるか」という勝負になったといえます。 こんなとき、新規に弁護士を探しているようでは遅いといえます。 提携する顧問弁護士と、従前からきちんと相談しておくことが大切といえます。 今後の債権回収のためにも、
違法な根保証はどうなるのか(オフサイドトラップは可能なのか)
中小企業で多いのは、経営者が企業の債務を包括的に根保証させられる場合です。 ただ、新しい民法でもそうですし、これまでも、一定の根保証は違法とされました。 今回、新しい民法では、ルールが整理されました。 まず、極度額(上限額)に限度のない根保証は「無効」、つまり、保証していないとみなされるという規定になりました(民法465条の2第2項)。 そのため、「極度額がない根保証」は、(当然、根保証の規定が適用されるものに限定されますが)敢えて中小企業は締結するという選択ができるようになりました。 ただ、全部がそうではなく、たとえば保証期間の定めが長過ぎるものは、「その部分だけ」無効となり、結局、3年の期限となるだけなのです。 違法だからといって、どこまで無効になるかは、それぞれ異なるわけです。 弁護士 杉浦智彦
債権譲渡の際、個人情報を渡してもよいのか
債権譲渡をするとき、あたりまえですが、譲渡人は譲受人に対して、その債務者の住所や電話番号を伝えることになります。 この債務者の個人情報を、こうやって勝手に受け渡してよいでしょうか。 結論から言えば、個人情報を渡すことは可能です。 なぜならば、債権譲渡については、債権譲渡禁止特約というものが付けられるにもかかわらず、それを付けることをしなかったということを捉え、必要最小限度の個人情報を渡すことについて「同意」していると考えられるからです。 こちらの解釈は、金融庁のパブリックコメントにも記載されています。 ただ、そうはいっても、かなり無理な解釈のような気はします。実際のところ、「債権譲渡のときに個人情報を渡せなかったら困る」というだけの理由だとは思います。 弁護士 杉浦智彦 #債権譲渡 #個人情報保護法
「種類株主総会議事録」の書式はこちらです
<まえがき> 最近、あるベンチャーの支援をしていて、そこで、A種優先株式に加え、新たにB種優先株式も発行することになりました。 それで「ああ、うっかりしてたが、種類株主総会の議事録を作らないかんなぁ」と思って、ネットで書式を探していたら(←探すなよ)、見つからなかったのです。 仕方がないので(?)私が作ります。 <材料> 結局、種類株主総会の議事録の記載事項は、株主総会の議事録と共通するのです(会社法施行規則95条9号、72条)。 その事項は、次のとおりです(規則72条3号各号)。 開催された日時及び場所 総会の議事の経過の要領及びその結果 <3号は種類株主総会には基本的に関係ない> 出席した取締役、執行役、会計参与、監査役又は会計監査人の氏名又は名称 議長の氏名 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名 <書式> ★年度 第★回A種優先株式種類株主総会議事録 1 日時 :平成★年★月★日 午前★時★分 2 場所 :本店所在地 3 出席者:発行済A種優先株式総数 ★株 A種優先総株主数 ★人 本日出席A種優先株主数 ★人 この議決権
12月から単価を上げる予定です
杉浦です。 最近、業務が少しずつ忙しくなり、悲しいことに、お客様の優先順位をつけていかなければならないようになってきました。 そのため、今後の顧問契約については、12月から単価を上げさせていただければと思います。 ホームページ上の単価も、12月までに上げる予定です。 そうはいっても、競合との価格では、合理的なラインで収まっているかと思います。 今後共、ご愛顧のほど、よろしくお願いします。 弁護士 杉浦智彦 #お知らせ #コラム
通信販売の際の表示事項
通信販売のとき、特定商取引法で、広告で表示すべきことが決まっています。 それは、遠方に住んでいる人であれば、その広告が唯一といってよい情報源になるからです。 販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要) 代金(対価)の支払い時期、方法 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期) 商品(指定権利)の売買契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(返品の特約がある場合はその旨含む。) 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号 事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該販売業者等代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名 申込みの有効期限があるときには、その期限 販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容およびその額 商品に隠れた瑕疵がある場合に、販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容 いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境 商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときには、その内容 請求によりカタログ等を別途
ついに賃金の時効が5年になるか
ついに、賃金の時効が2年から5年になりそうです。 日経新聞「未払い賃金請求、最長5年に サービス残業抑制へ検討」 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23658740Y7A111C1MM8000/ いままでは、賃金の時効は2年でしたので、せいぜい数百万円レベルの請求にとどまることがほとんどでした。 しかし、時効が5年となると、相当前からさかのぼって、未払い残業代の請求がなされることになります。 そうなると、未払い残業代が存在しているかもしれない企業にとっては、かなりの打撃です。 これまでは、会社に居づらくなることを考えて残業代請求をしていなかったが、5年分ももらえるということで、残業代請求を平気でしてくるような時代が来るかもしれません。 2020年に改正法が施行される可能性が高いので、それまでに、弁護士を伴って労働システムの改善をしていくことが望まれるでしょう。 弁護士 杉浦智彦 #賃金 #時効