共同開発契約で「独自に生み出した」かどうかを判断するには
共同開発契約をしていても、「独自に生み出した」成果は、その開発者のものとなります。 しかしながら、本当に「独自」なのか、争いが多いのは確かです。 「情報・ノウハウを利用せずに生み出した。」というのが基準にはなりますが、実際は、判断は難しいのです。 だって、「全く意識なんかしていなかった」なんて、いえないですからね。 そうはいっても、紛争になるのは避けたいでしょうから、そういう場合、 一方当事者のみに帰属することになった成果を他方当事者は無償で自ら利用(実施)できるとすると深刻な紛争にはならないので、そのような規程をおいている企業も多いように思います。 一つの対応策として、ご検討ください。 弁護士 杉浦智彦 #共同開発契約
判例解説_最判平成30年7月19日_定額残業手当の有効性(肯定)
本判決を踏まえてのまとめ ・定額残業手当を支払うときは、何時間の残業に対応するか明記しよう ・定額残業手当の残業時間と実際の残業時間は、ある程度近い時間にしておこう ・定額残業手当を採用していても、きちんと労務管理をしておこう 【事実関係】 薬剤師の残業代請求事件である。 一ヶ月当たりの平均所定労働時間は157.3時間であり、残業時間は、次のとおりであった。 30時間以上が3回 20時間代が10回 20時間未満が2回 <従業員に渡していた雇用契約書の賃金の定め> 賃金月額 562,500円(残業手当含む) <この従業員の採用条件確認書の記載事項> 「月額給与461,500」 「業務手当 101,000 みなし時間外手当」 「時間外勤務手当の取り扱い年収に見込み残業代を含む」 「時間外手当は、みなし残業時間を超えた場合はこの限りではない」 <賃金規程> 「業務手当は、一賃金支払い期において時間外労働があったものとみなして、時間手当の代わりとして支給する。」との記載があった。 <給与明細書表示> 月額給与461,500 業務手当101,000円 時間
中小企業も60時間以上の残業の割増率は50%になる?
働き方改革の法案が通りました。 いろいろな改革があるのですが、その中で、実は、中小企業にとって大きな改正がいくつもされています。 その一つが、「60時間以上の残業代5割割増の規程の猶予が外れる」ということです。 これまでは、大企業のみ、60時間以上の残業が5割割増賃金となっていました。 それが、平成35年を目処に廃止されることになりました。 60時間というと、一日あたり3時間残業したら、アウトですね。 下手に従業員を少なくしてしまうと、人件費がかえって大きくなってしまうことも考えられるわけです。 この猶予期間の間に、弁護士を含めた労務の抜本的改善が必要になるかもしれません。 弁護士 杉浦智彦 #働き方改革 #残業代
労働契約書と就業規則はどちらが優先するか
労働契約書を作られている企業は多いように思います。 ところで、就業規則と労働契約書は、内容が矛盾するようなとき、どちらのほうが優先されるでしょうか。 結論からいうと、 「原則として、労働者にとって有利なほうが適用される」ということになります。 本来は、労働契約書が、就業規則よりも優先するはずなのですが、 労働法は、労働者の権利を守るために存在しているため、有利なものは全部適用させていくということになるのです。 もし、労働契約書の内容が、想像をしていないような内容になっていたようなときは、弁護士を入れて整備をすべきでしょう。 労働者の合意や和解を、できるだけよい「時期」(←儲かっているときということですね)にするのがよいでしょう。 弁護士 杉浦智彦
法律上の「書面」にPDFが含まれるか
たとえば、借地借家法22条は 「続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第1項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。」とあります。 ここでの「書面」って、どういうものでないといけないのでしょうか。 果たして、PDFなどの、電子書面では許されないのでしょうか。 実は、「書面」の定義次第なのです。 ただ、一般論としては、書面は「紙」でなくてもよいが、「有体物」でないといけないということになっています。 たとえば、民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成16年法律第149号)の2条3号では、次のような定義がなされています。 「三 書面 書面、書類、文書、謄本、抄本、正本、副本、複本その他文字、図形等人の知覚によって認識 する
三者鼎立型のNDAのとき、受領者は"party" "parties", "party/parties"のいずれで表記するのがよいか
どうでもいい話題です。 三者まじえての守秘義務契約を締結することがあります。 そのとき、情報開示者は一人になりますが、情報の受け手をどのように定めるべきかが難しかったりします。 日本語だと単純に「受領者」としてしまえばよいんですが、英語だと、単数・複数の問題があります。 the other のあと、どう表記するかという部分で、悩んでいました。 一つの回答として、 http://contracts.onecle.com/careerbuilder/tribune.disclose.2000.06.20.shtml ここで公表されているNDAでは、単数形であるthe other party となっていました。 理由は、(英語の文化圏の人ではないので分からないですが)義務を負うのは個別の受領者ですし、また、一気に公表するのではなく、それぞれに情報を「交付」しているように考えられるからかもしれません。 そのため、もし悩んでも、英文では、the other partyとしておいてよいのでしょう。 弁護士 杉浦智彦 #英文契約 #NDA
CISG(ウィーン売買条約)はどういう場面で適用されるのか
CISG、ウィーン売買条約とは 国境を越えて行われる動産(=不動産と債権以外)の売買に関する条約です。 ざっくり言えば、「国際的な民法」ですね。 さて、このCISGは、どのような場面で適用されるのでしょうか。 まずは、CISG加盟国に属する当事者同士の契約であれば、CISGが適用されることになります。 また、一方だけがCISG加盟国の場合でも、国際私法によって、加盟国の法律で判断される(準拠法)ことになります。 ところで、「準拠法の指定があれば、そもそもCISGと国内法のいずれが優先するのか」という疑問が生まれると思います。 まず、公序良俗など、国内で強制的に適用されるようなルールである「強行法規」については、国内法が優先します。 ただ、それ以外については、原則として、CISGが優先すると考えられています。 また、CISGと、契約の条項や、インコタームズとの優劣はどうでしょうか。 これは、合意内容である、契約の条項やインコタームズが優先すると言われています。 まとめると 合意内容=インコタームズ>CISG>国内法 という順番で優先されるということ
新しい民法で規定される「定型約款」はBtoBにも適用されるか
定型約款は、不特定多数の者を相手方として、内容が画一的であることが合理的な取引について定められた、事業者が準備をした約款をいいます。 これは、一見、消費者契約法のようなので、BtoC(事業者・消費者間)でしか適用されないようにも読めます。 しかしながら、ルール上、そのような限定はありません。 そのため、事業者間のBtoBの契約でも、定型約款の規定は適用されるのです。 BtoBしかしていない企業でも、定型約款の規定は注目しなければなりません。 もし不安があれば、弁護士に一度ご相談ください。 弁護士 杉浦智彦 #定型約款 #民法改正
事業に関して保証人になるように友人に依頼することは難しくなる?
新しい民法では、保証の際、原則として「公正証書」で意思を確認する手続きが入ることになります。 それだけではなく、もう一つ大きな変更があります。それが事業にかかる債務の保証についての「情報提供義務」というものです。 民法465条の10では、債務者は、保証人に対して、財産・収支の状況などを情報提供しなければならなくなりました。(情報提供しなかったり、嘘をついたりすると、保証が取り消されます。保証が取り消されると、主たる債務の期限も到来することになります) 保証が取り消されやすくなると、同時に、貸主も「そんなひとの保証は取るな」ということになりますから、結局、保証人を友人にすることは難しい時代が到来するのだろうと思います。 ただ、よく言いますよね、「友人から1000万円の保証を頼まれたら、自分が100万円を貸せ。100万円の保証を頼まれたら、10万をあげろ」なんて。 友人からお金を借りたり保証を依頼するのは、かなり追い込まれている状況で、回収率は大変低いといえます。 友人に保証を依頼することは、友人関係も壊れますし、そこまでしてお金を借りたり事業を回さ