何が契約不適合かを示すため、契約書の最初に目的を書くべきだ
世の中で法律家だけが書けるという「かしたんぽ」という四字熟語。 皆様書けるでしょうか。 答えは「瑕疵担保」です。 それはいいとして、民法改正により、瑕疵担保が、「契約不適合」と言い換えられました。 定義として「目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」と定められました(民法562条1項)。 契約不適合かどうかは、契約の内容から考えて、適合するかが判断材料となるわけです。 その判断要素として使われる可能性があるのが、「契約の目的」の記載です。 通常は、第1条や前文に記載されることが多いです。 英文だとリサイタル条項といって、Whereas~という形で記載されることが多いですね。 リスクを明確にするためにも、記載をきちんとしておくことが、今後の契約書実務で求められることでしょう。 弁護士 杉浦智彦
法人自体の不法行為?
普通は、会社が違法な行為をしてしまったとき、その違法行為をした従業員や代表者の過失を主張し、その責任主体ということで、会社が民法715条や会社法350条を使って責任追及されることになります。 しかしながら、場合によっては、法人自体に過失を問われることがあります。 たとえば、公害の場合など、従業員一人ひとりの責任がよくわからない場合は、それらが集団として悪いことをしているのだということを云うための「方便」として、企業そのものが不法行為をしたと構成したことがあります。 ただ、そうでない場合に、法人自体が不法行為をしたというのは、法人自体が行動できず、結局は役員や従業員が行動している以上、難しいことが多いのでしょうね。 弁護士 杉浦智彦
不正競争防止法で機密情報を守るのは難しい?
中小企業が不正競争防止法で機密情報を守り切るのは難しいといわれています。 その理由の一つが、保護される要件として要求されている「秘密管理性」が厳しく判断されているからです。 紙媒体なら、鍵のついている倉庫に管理し、さらにその鍵も代表者などの管理者が現住に保管しなければならない。 データなら、インターネットにつながずスタンドアロンにして、さらにパスワードつけても、そのパスワードを、本当に利用する関係者のみに限定することをしなければ、不正競争防止法で保護してもらえません。 そんなときに役立つのが「守秘義務契約書」です。 これさえ結んでおけば、秘密として管理されているかは問われず、法律上保護してもらえることにはなります。 ただ、これはお金で解決できるだけで、実際失った情報の価値は帰ってきません。 情報はできるかぎりもれないようにしながら、同時並行で守秘義務契約を締結しておくことがベストでしょう。 守秘義務契約書の作成は弁護士にお任せください。 弁護士 杉浦智彦
お盆明けました
お盆が明けてしまいました。 私は、実家に帰って、祖母に会ってきました(←生きてますよ)。 病院で久しぶりに会った祖母は、意識がはっきりとしているだけに、感情の抑制が効かず、しんどそうでした。 どんな人でも、最後はこうなるのかと思いながら、なかなか感慨深い土日を過ごしていました。 今回はこんなところで。 弁護士 杉浦智彦 #コラム
「下請法」は事前の交渉材料として使わないといけない
下請法という法律があります。 ざっくりいうと「元請けは、下請けをいじめてはいけないですよ」という法律です。 ただ、取引がはじまってしまうと、文句をいいにくいわけで、下請法を活用することは、案外難しいと思います。 そりゃそうですよね。仕事をくれる人に文句をいう企業は、生き残れないでしょう。 下請法の実際の活用場面は、実はトラブルが起こる前の、契約条件を決めるタイミングなのです。 そのときに、「顧問弁護士に言われていて・・・」ということで、契約書に盛り込んだ上で対応することで、下請けにとってベストな条件を引き出すことが可能となります。 ぜひ、下請け企業の方で、新規取引が入りそうなときは、弁護士にご相談ください。 弁護士 杉浦智彦
利用規約はビジネスの「屋台骨」だ
利用規約の整備をすることが増えてきました。 民法改正で、利用規約をふくめた定型約款にも法整備が届くようになりました。 利用規約は、よく「他の企業のものをパクればいい」みたいなことを言われますが、それは誤りでしょう。 利用規約は、ビジネスの「屋台骨」なのです。 外見は立派に見えても、骨組みが甘いと、倒れたり、隙間をつかれたりするわけです。 弁護士が関与した上で利用規約を整備することは、本当に大切だと思います。 弁護士 杉浦智彦
雇用契約書は弁護士ではなく社会保険労務士に相談してもよいのか
弁護士法には、以下の規定があります。 (非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止) 第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。 これが、いわゆる「非弁」といわれるものを規制するルールとなります。 「その他の法律事務」には、契約書の相談も含まれます。 そのため、基本的には、弁護士以外がやってはいけないんですね。 一つの例外が、社会保険労務士が労務に関する契約書などの相談を受け付けるときです。 【社会保険労務士法】 第二条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。 (中略) 三 事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること。 (後略) この社会保険労
委任契約の「報告義務」の範囲
委任契約を締結すると、受託者は委託者に対して、委任事務処理について報告する義務があります。 これは、委任というのは、「おまかせしますからね」というところで、中身を確認できず、本当に仕事をしてくれているか分からないので、仕事しているか検証する材料を与えるため、民法で報告義務を用意しているのです。 この範囲は、結果だけではなく、処理状況の経緯の報告も必要です。 なお、結果については報告しなければなりませんが、経過や処理状況については、合意によって免除することはできます。 処理状況については、場合によっては、ノウハウなどに該当する可能性もあるわけですが、もしノウハウにあたるからということで守りたいなら、契約書で、きちんと報告義務を限定しないといけません。 弁護士 杉浦智彦 #報告義務
不動産賃貸借の終了後、賃料相当額の損害賠償請求ができるのはいつまでか
完全に私見メモです。 1 問題の所在 建物賃貸借契約が終了したあと、その場所に居座ると、所有権をもっている人は、その占有者に対して賃料相当額の損害賠償を請求することができます。 さて、これ、いつまで請求できるのかという話です。 鍵を返したタイミング? 中身をきれいにしたタイミング? この問題は、昔から、それなりにあったようです。 多くのウェブサイトでも取り上げられていますし、 島田佳子裁判官の論文もあります。 ※ただ、多くの事例は、明渡しがなされたことを前提に、「原状回復しろ」と争われています。その点はご留意ください。 2 そもそも、なぜ「賃料相当額」が損害といえるのか 「返してもらって元通りにしてもらっていたら、ほかのひとに貸せたのに、貸せなくなった」(下線部はあとで問題になります) これが、賃料相当額の損害賠償請求を取れる理由です。 そのため、要件としては ・その建物についての賃貸借契約成立 ・賃貸借契約の終了を基礎づける事実関係 ・賃貸借契約終了にともなって建物を返す義務がある(その中身が問題になるのですが・・・) ・その義務を履行していな
メルカリのようなエスクロー決済を導入するための対応
1 エスクロー決済とは エスクロー(Escrow)は、「預託」という意味です。 エスクロー決済というのは、商取引の際に信頼の置ける第三者を仲介させて取引の安全を担保する制度です。 メルカリを使ったことがある人ならばわかると思いますが、メルカリは、こんな流れの決済手法です ・買主がお金を払って、メルカリが預かる。 ・売主が商品を発送する ・それが確認できたときにメルカリが売主にお金(メルカリの場合は、厳密にはお金ではないのですが・・・)を渡す これだと、売主が変なものを売りつけて逃げることも避けられますし、買主がお金を払わず逃げるということも避けることができます。 これが、まさにエスクロー決済です。 2 法規制がある理由 しかしながら、このエスクロー決済は、原則としては、資金決済法上の「資金移動業」としての登録が必要とされています。 その理由は、「その間の人が信頼できる人でないと、取引が円滑に動かず、困るから」です。 メルカリくらい大きくなったら、さすがに逃げることは考えにくいですが、 そうでないところだとどうでしょうか。 勝手に、お金を持ち逃げし