事業承継に携わると、なぜ敵対的買収が難しいかを知ることができる
日本で敵対的買収を実現させるのは、とてもむずかしい。
日本では、敵対的買収は極めて「成功しにくい」土壌があるといえる。
感情面などいろいろあるが、一番の問題は「組織化が不完全で、誰がやっても同じことができるようになるわけではない」ということに尽きる。
事業の根幹を支えているのが「ある人財(人材)」ということが多い。
その人を引き継げなければ、本当の意味で買う意味のない企業というのは相当多いように思います。
中小企業になると、この傾向は顕著になります。
村上ファンドなどの思考回路は、「清算価値(=いますぐ破産したときの価値)を下回っているから買収する」というシンプルな発想、つまり優良な固定資産などが多い場合だけなのですが、
継続的に利益を出し続ける企業として買収するというのは、およそ不可能といえます。
経営者の同意がない買収は、簿外債務などもわかりませんし、どのようなリスクがあるかも不明です。
残業代請求をいきなりされるなんてことも考えられます。
そんなわけで、事業承継問題に取り組む中で、敵対的買収というのは、本当に実現しにくいんだろうなと思うようになりました。
弁護士 杉浦智彦