理由なく「〇〇には一切相続させない」とだけ書く遺言は割と迷惑だという話
遺言もたまに見ます。
遺言で、たまに「あ、これ面倒だな」と思うものがあります。
その一つが、相続人廃除です。
廃除というのは、法律の制度で、ある相続人の相続権を奪う制度で、裁判所の判断が必要です。
(遺言による推定相続人の廃除) 第893条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
こんな規定があり、遺言で廃除の意思が出されると、遺言執行者は(どれだけ無理筋でも)申し立てなければならないのです。
タイトルに戻ると「一切相続させない」というのは、廃除の意思のようにも読めます。
そのため、かなり遺言執行者としては悩むのです。
単に相続分をゼロにするだけなのか、すでに生前贈与であげているということなのか、そういう「理由」があると、「ああ、廃除の意思まではないのか」と判断できるわけです。
廃除は、なかなか認められることのない制度なので、申し立てる方としても、無理筋で、あまり申し立てたくはないのです。
そのような気持ちを察していただき、遺言を書く際にも、この点を参考にしていただけると嬉しく思います。
弁護士 杉浦智彦