代理権の「濫用(本人のためにやらない)」と「逸脱(範囲をこえてやる)」は大きく違う
権限濫用と権限逸脱は、似ているようで違います。
権限逸脱は、もらった権利を超えているわけですから、原則としては無効(法律用語では「効果不帰属」という言い方をします)となり、あとはその代理人本人に請求していく話となります。
例外として、「表見代理」というルールとなりますが、このルールを適用するにも、その範囲に代理権があったと信じたことと、その信じたことに過失がなかったことも要求されます。(民法110条)
ハードルが高いのです。
一方、権限濫用は、実は原則として有効となります。「そんな濫用をするような人に任せたお前がわるい」という思想なのだろうと思います。
ただ、権限濫用の場合、必ず有効となるわけではありません。濫用であることについて知っていたか、知ることができた場合には、無効となります。(新しい民法107条)
そういうわけで、近いようで、案外差があるのです。
ただ、そうはいっても、実際の事案では、かなり微妙な判断となります。(「オレがやっているのは濫用だ」なんて思いながら行為をする人がいないように、判断も大変なのです)
弁護士 杉浦智彦