創業年を偽ることは「不正競争」なのか
京都銘菓「八ッ橋」を製造・販売する老舗「聖護院八ッ橋総本店」(京都市左京区)が掲げる創業年「元禄2年創業」は虚偽だとして、「井筒八ッ橋本舗」(同市東山区)が、不正競争防止法に基づき、表記の差し止めと600万円の損害賠償を求める訴えを京都地裁に起こしたそうです。
「そんな、創業年を偽るようなことが、不正競争なのか」と思われた方のために、ここで、その「可能性」があることを解説します。
1 不正競争防止法2条1項14号の問題?
現時点で、どの条文に違反していると主張しているかは不明ではありますが、不正競争防止法2条1項14号の争いなのではないかと思われます。
「商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為」
この「品質」に、創業がどれだけ昔かどうかに影響するかというのが争点になりそうです。
2 過去「元祖」で争われた事例があった。その結論は?
実は、過去、「大阪みたらし元祖だんご」事件というものがありました。これは、今回の八つ橋と似たような案件で、「元祖」とつけることが「品質」の誤認表示に該当するかという争いでした。
大阪高裁は、結論として、「元祖」が品質を表示するものとは認めませんでした。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/304/035304_hanrei.pdf
具体的には、裁判所は「同種の菓子食品であっても品質等(原材料,成分・栄養分,添加物の有無,味覚,食感,消費期限,保存方法等),様々な点に違いがあるのが通常であって,一番最初に当該商品についての着想を得る等した者が製造した商品であるからといって,必ずしもその品質が優れているとは限らないから,「元祖」を上記のように解したとしてもかかる表示が直ちに商品の特定の品質に結びついて商品選定に影響するとは認められない。」と言っています。
3 今回の結論は?
どうなるかについては、正直、具体的な主張をみないと判断しきれません。
ただ、争いとして、必ずしも筋がよいものではない中、実質は「どちらが元祖なのか」みたいな話ではあるので、相当揉めることは予想されるでしょう。
弁護士 杉浦智彦