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平成30年消費者契約法改正-2

前回の続きです。

今回の改正の目玉の一つである、「霊感商法」対応について、解説します。

消費者契約法4条3項3号に、以下の記載が追加されました。

当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、次に掲げる事項に対する願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該願望を実現するために必要である旨を告げること。

イ 進学、就職、結婚、生計その他の社会生活上の重要な事項

ロ 容姿、体型その他の身体の特徴又は状況に関する重要な事項

なお、4条3項自体は、

消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

という条項です。

霊感商法だとして、取り消すためには、以下の要件が必要となると思われます。

  1. 消費者が社会生活上の経験が乏しいことから一定の願望の実現に過大な不安を抱いていること

  2. 事業者が1を知っていること

  3. 事業者が不安をあおること

  4. 事業者が、正当な理由がある場合でないのに、消費者契約の目的となるものが1の願望を実現するために必要であるように告げること

  5. 消費者が4により困惑すること

  6. 5により消費者契約の締結に至ったこと

ここで「思われます」としているのは、正直、1の要件の「社会生活上の経験が乏しいこと」の証明まで必要になるかという部分など、かなり不明瞭な部分があるからです。

常識的に考えれば、1の要件は、年齢や、社会人経験などから、緩やかに判断されることになろうかとは思いますが、正直、今後の裁判例の展開を見守る他ありません。

また、2の要件も、「知ることができた」ではなく、「知っていた」必要があるので、かなり大変な証明になるでしょう。他人が何を考えているかなんて、なかなか分からないはずです。

ここも、常識的に考えれば、1の要件のバックグラウンドである、年齢や社会人経験などについて知っていれば足りるという判断がなされそうではありますが・・・

なかなか、消費者側にとって使い勝手のよくない制度でしょうし、

企業側の弁護士にとっても、「霊感商法だ」といちゃもんを付けられないようする「基準」が不明確なので、なかなか難しいかもしれません。

たとえば、薄毛に悩んでいる人がいて、その人に薄毛に効くと言われている健康食品を売りたい場合、もしその薄毛の効果の裏付けが乏しいが、ユーザーからは感謝の声が届いているような場合です。

この事例で、「このままだとハゲるから、これ、使ったほうがいいよ」という場合に、この条項によって取り消されたりはしないか、かなり不明瞭とはいえるでしょう。

意見公募の段階では、1の要件についてはこのような形になっていなかったので、判断は難しいところです。

その中で、もしビジネスを進めるなら、弁護士のアドバイスは必須となるでしょう。

お悩みの方は、一度ご相談ください。

弁護士 杉浦智彦

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